なぜ押したまま、もう一度動いてもらうのか?整体院心華が何度も確認する理由
なぜ押したまま、もう一度動いてもらうのか?整体院心華が何度も確認する理由
整体院心華では、施術の前に症状が出る動作や姿勢を確認したあと、身体の一部に触れたり、圧を加えたりした状態で、もう一度同じ動きをしていただくことがあります。
初めて受ける方からすると、「なぜ押したまま、また動くの?」「腰が痛いのに、なぜ足やお腹まで見るの?」と不思議に感じるかもしれません。
この記事では、当院がなぜこのような確認を行うのかを、現在分かっている神経生理学や運動制御の研究と、実際に当院で行っていることを分けながら説明します。
この記事の結論
- 身体に触れたり圧を加えたりすると、身体に入る感覚の条件が変わり、動き方や症状の感じ方が変化することがあります。その反応を、次にどこを確認するかを考える手掛かりにしています。
- 押して症状が変わっても、「そこが原因」とは判断しません。変化がなければ、その場所にはこだわりません。
- 身体の状態は確認する過程でも変化するため、検査・施術の途中で何度も同じ動きを確認します。
整体院心華では、実際に何をしているのか
まず、患者さんが感じている症状を詳しく確認します。
たとえば「しびれ」と一言でいっても、
- ジンジンする
- ピリピリする
- 引っ張られる
- 突っ張る
- 一枚覆われたように感覚が鈍い
など、感じ方は人によって異なります。
さらに、
- 何をすると症状が出るのか
- どの姿勢で強くなるのか
- どの姿勢では楽になるのか
なども確認します。
そのうえで必要に応じて、前屈・後屈・身体をひねる動き・横へ倒す動き・座位・仰向け・歩行などを実際に行っていただきます。
大まかな流れは次の通りです。
- 症状が出る動作や姿勢を確認する
- そのとき身体全体がどのように動いているかを見る
- 不自然に力が入っている部分や、動きにくい部分などを候補として確認する
- 候補となる部分に触れる、または圧を加える
- その状態でもう一度同じ動作・姿勢を行ってもらう
- 症状・動きやすさ・症状が出る範囲などがどう変化したか確認する
- その反応を、次に確認する場所や施術方法を考える材料の一つにする
ここで最も大切なのは、
「押して症状が変わった場所=原因」とは考えていない
ということです。
なぜ押した状態でもう一度動いてもらうのか
身体は「感覚」を使いながら動いている
人の身体は、脳から筋肉へ一方的に命令を出すだけで動いているわけではありません。
皮膚、筋肉、腱、関節周辺などから入ってくる感覚情報を使いながら、そのときの姿勢や動きを絶えず調整しています。
触れられている感覚や圧を感じる感覚、身体の位置や動きを感じる固有感覚などは、こうした運動の調整に関係しています。
現在の神経科学でも、感覚情報が運動制御に重要な役割を持つことは広く認められています。
つまり、身体の一部に触れることは、単に「皮膚の上から押している」だけではありません。
その瞬間、身体へ入る感覚情報の条件も変わります。
軽く触れるだけでも、身体の動きが変わることがある
この関係を理解する例の一つに、指先を外部の物体へ軽く触れた状態で立つ研究があります。
身体を支えるほどの力を加えていなくても、指先から得られる感覚情報によって、立っているときの身体の揺れ方が変化することが報告されています。
もちろん、「指先を物へ軽く触れる研究」と「整体院で身体へ圧を加えて動いていただくこと」は同じではありません。
ただし、身体へ入る感覚情報が変わることで、運動の仕方が変わる可能性があることを理解する一つの例になります。
痛みがあると、動き方そのものが変わることがある
痛みがあると、「痛い場所の一つの筋肉だけが硬くなる」という単純な反応だけが起きるわけではありません。
痛みに応じて、複数の筋肉の活動の配分や、身体の動かし方そのものが変化するという理論が提案されています。
そして、その反応には個人差があります。
そのため当院では、
「この筋肉が硬いから、ここが原因」
と一か所だけで判断するのではなく、その方が症状の出る動作をどのように行っているのかを確認します。
圧や徒手刺激で神経の反応が一時的に変化した研究もある
健康な人のふくらはぎへマッサージを行っている間、脊髄の反射をみる指標が一時的に変化したという研究があります。
また、脊椎への徒手療法を対象とした研究でも、痛みの感じ方や神経系の働きに短時間の変化がみられた報告があります。
ただし、ここには重要な注意点があります。
これらの研究で行われた刺激と、当院が検査として行う「触れる・圧を加える」という方法は同じではありません。
研究結果にもばらつきがあり、
「ここを押したから、この神経が抑制された」
と一人ひとりについて特定できるわけでもありません。
そのため当院では、このような研究を根拠に「押せば特定の神経が抑制されて筋肉が緩む」とは説明していません。
なぜ痛い場所以外も確認するのか
たとえば左腰が痛くても、歩いたり身体をひねったりするときに、左腰だけが単独で動いているわけではありません。
足の指、足首、膝、股関節、骨盤、体幹、胸郭、腕など、多くの部分が同時に動いて一つの動作をつくっています。
そのため当院では、
「症状が出ている場所」だけではなく、「症状が出る動作全体」
を見ることがあります。
これは、
「身体は全部つながっているから、離れた場所が原因になる」
という意味ではありません。
離れた部分も含めて動作を観察し、その部分の条件を変えたときに、動作や症状がどう変わるかを見るという意味です。
当院が、静止した状態で「骨盤が何cmずれているから症状が出ている」といった評価より、実際の動作の中で身体がどのように連動しているかを重視しているのも、この考え方につながっています。
実際の臨床ではどのように確認するのか
以下は、当院で実際にみられた反応をもとにした例です。症状の変化には個人差があり、同じ症状で同じ反応が起こることを意味するものではありません。
例1:太ももの症状を、お尻だけで判断しなかったケース
50代女性で、事務作業が中心の方です。
横になると、太ももの裏から外側にかけてジンジンする症状が出ていました。
まず症状が出る姿勢を確認し、お尻の周辺へ刺激を加えた状態でもう一度確認しましたが、大きな変化はありませんでした。
次に太ももの内側(内転筋)へ圧を加えた状態で確認すると、症状が軽減しました。
さらにお腹の周辺についても確認し、刺激を加えた状態で再確認すると、もう一段階変化がみられました。
この時点では、まだ「施術」ではなく検査です。
「太ももの内側が原因だった」「お腹が症状の原因だった」と判断したわけでもありません。
どの条件を変えると症状に変化が出るのかを確認し、その反応をその後の施術を考える手掛かりにしたというケースです。
例2:左腰が痛くても、右足を見ることがある
仰向けで膝を曲げ、膝を右へ倒すと左腰に痛みが出る方がいました。
その動作を確認すると、右足の指が反り上がる動きがみられました。
そこで左腰だけではなく、右足の指についても確認します。
これも、
「右足の指が左腰痛の原因」
と決めつけるためではありません。
身体全体の動作の中で何が起きているのかを確認し、条件を変えたときに反応がどう変わるかを見るためです。
例3:症状の場所から離れた部分まで確認を広げたケース
股関節や脚を確認しても明確な手掛かりが少なく、医療機関でMRIやX線を受けても、症状を説明する明確な異常を指摘されていなかった方がいました。
この方では、肩をすくめた状態で動くと症状が軽減する反応がありました。
肩をすくめると、首・胸郭周辺などの状態も変化します。
そこでその反応を手掛かりに、肋骨周辺、首の横にある斜角筋周辺、下部肋骨を含む横隔膜周辺などにも確認範囲を広げました。
その後のアプローチで症状に変化がみられました。
ただし、
「横隔膜が症状の原因だった」
とは考えていません。
「肩をすくめる」という条件によって症状が変わったため、それに関係する部分も検査対象として広げたというケースです。
押して変化しても「そこが原因」と言わない理由
ある場所を押して痛みや動きが変わっても、それだけでその場所が原因だったことを証明することはできません。
症状や動きの変化には、感覚入力以外にも複数の要素が関係する可能性があります。
- 押さえた手によって動きが物理的に支えられたり制限された
- 同じ動作を繰り返したことで動きに慣れた
- 姿勢や動作がわずかに変わった
- 痛みに向けていた注意が変わった
- 「変化するかもしれない」という予測や期待が影響した
- もともとの症状に自然な変動があった
このような可能性があるため、当院では一度の変化だけで結論を出しません。
変化がなければ、その場所にこだわらず次の候補を確認します。
逆に変化があった場合も、それを「原因を発見した証拠」ではなく、次の判断材料の一つとして扱います。
なぜ何度も同じ動きをしてもらうのか
初回の検査では、
というように、何度も同じ動作をお願いすることがあります。
Aへの刺激で状態が変われば、その次に目立つ動きが変わる場合があります。
Bを確認することで、さらに別の反応が見えてくる場合もあります。
身体の動きは固定されたものではなく、その時点の痛み・感覚・姿勢・運動の仕方などによって変化します。
そのため当院では、
という流れを繰り返します。
施術後にも同じ動きを確認し、最初と比べてどう変化したかをご本人と一緒に確認します。
最初に決めた場所を最後まで施術し続けるのではなく、身体の状態が変われば、確認する場所も改めて考えるというのが当院の基本的な考え方です。
セルフケアについても同じで、状態が変われば、それまで行っていた方法を変更することがあります。
「ブレーキの指令」という説明について
患者さんへ説明するとき、私が
「身体が無意識にブレーキをかけているような状態かもしれません」
という表現を使うことがあります。
これは医学的な正式名称ではありません。
身体から入る感覚情報と、脳や脊髄から出る運動の指令との関係を、分かりやすくイメージしていただくための例えです。
実際の神経系では、興奮させる働き、抑制する働き、脊髄での反射、脳での感覚処理など、複数の仕組みが関係しています。
そのため、
「ここを押すと抑制シグナルが送られる」
「ブレーキが解除されて筋肉が緩む」
と単純に説明できるものではありません。
ファシアや身体の「つながり」はどう考えているのか
当院では、身体全体の動きを考える際に、ファシアの考え方も参考にしています。
ただし、ファシアという言葉には複数の定義があり、現在も完全に統一されているわけではありません。
研究者の一部からは、浅い層のファシアだけでなく、筋骨格系、内臓周囲、神経周囲などを含めた、より広い「fascial system」として整理する提案もあります。
また、一部の筋や結合組織の間に解剖学的な連続性や力の伝達がみられることを示した研究もあります。
一方で、
「解剖学的につながっていること」と「その場所が症状の原因であること」は別の問題です。
そのため当院でも、「アナトミートレイン上でつながっているから、ここが原因」という判断はしていません。
ファシアや身体の連続性は、確認する場所を考える際の一つの参考として扱っています。
医学的に分かっていること・まだ分かっていないこと
比較的分かっていること
- 身体から入る感覚情報は、運動の調整に関係している
- 痛みがあると、身体の動かし方が変わる場合がある
- 触れる・圧を加えるなどの刺激によって、神経系や痛みの感じ方、動きに短時間の変化がみられる場合がある
現時点で断定できないこと
- 「この場所を押したから、この神経が抑制された」と個人レベルで特定すること
- 「筋肉が緩んだから痛みが減った」と一つの仕組みだけで説明すること
- 押して症状が変わった場所を、そのまま症状の原因と判断すること
- ファシアや解剖学的なつながりだけから、その人の症状原因を特定すること
当院では、分かっていないことまで医学的な事実として説明するのではなく、実際に起きた反応を一つずつ確認しながら施術方針を考えることを大切にしています。
整体より医療機関での確認を優先してほしい場合
当院で身体を確認することと、医療機関で病気や神経障害などを調べることは役割が異なります。
特に腰や脚の症状に加えて、新しく排尿・排便の異常が出た場合、股の周辺の感覚が低下した場合、下肢に力が入らない場合などは、整体ではなく医療機関での評価を優先してください。
当院でも、医療機関での確認が必要と考えられる場合には、受診をおすすめします。
よくある質問
Q. なぜ痛い場所ではないところを押すのですか?
痛い場所だけではなく、症状が出る動作全体を確認しているためです。離れた場所が原因だと決めつけるのではなく、条件を変えたときに動作や症状がどう変化するかを見ています。
Q. 押して楽になった場所が原因ということですか?
いいえ。変化した場所は手掛かりの一つですが、それだけで原因とは判断できません。施術後にももう一度確認し、その時点の反応を見ながら次を考えます。
Q. 押しても何も変わらなかった場合は?
それも大切な情報です。変化しなければ、その場所にこだわらず、別の候補を確認します。
Q. なぜ初回は何度も同じ動きをするのですか?
どの条件を変えたときに症状や動きが変化するのかを確認するためです。一つ確認するたびに身体の状態が変わることもあるため、その都度、同じ動作を確認します。
まとめ|「原因を決めつけるため」ではなく、次を考えるための確認です
身体の一部に触れたり圧を加えたりすると、その瞬間、身体に入る感覚情報や、動作の条件そのものが変わります。
人の身体は、そうした感覚情報を利用しながら、その都度動きを調整しています。
だから当院では、
という確認を行っています。
変化があったからといって、その場所を原因とは決めつけません。
そして、変化がなければ、その場所にはこだわりません。
一度の反応だけで身体を決めつけず、その都度確認しながら、次に何をするかを考えていく。
これが、整体院心華で何度も「もう一度、同じ動きをしてみてください」とお願いする理由です。
初めて来院される方に向けて、施術の考え方や来院時の流れについてご案内しています。
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※本記事は、身体への刺激によって特定の症状が改善することや、特定の部位が症状の原因であることを示すものではありません。症状や身体の反応には個人差があります。

