ヘルニアと坐骨神経痛の違い|MRI画像だけでは分からない症状との関係

「病院で腰椎椎間板ヘルニアと言われた。脚もしびれるので、これが坐骨神経痛なのだろうか?」

この2つは関係することがありますが、同じ意味ではありません。

先に結論
腰椎椎間板ヘルニアは、椎間板が突出・脱出した「状態・疾患」を表す言葉です。
坐骨神経痛は、お尻から脚にかけて出る痛みやしびれなどの「症状」を表す言葉です。
ヘルニアによって坐骨神経痛が出ることはありますが、MRIでヘルニアが見つかっただけで、現在のすべての症状をその所見だけで説明できるとは限りません。
項目 腰椎椎間板ヘルニア 坐骨神経痛
何を表す? 椎間板の突出・脱出などを伴う状態・疾患 お尻から脚に出る痛み・しびれなどの症状
MRIとの関係 椎間板の形態や神経周囲との位置関係などを確認できる 「坐骨神経痛」という症状そのものをMRIで写すわけではない
必ず症状が出る? 画像所見があっても症状がない人がいる 症状がある状態を表す
両者の関係 坐骨神経痛を生じる要因の一つになり得る ヘルニア以外の状態でもみられることがある
腰椎椎間板ヘルニアの画像所見と坐骨神経痛によるお尻から脚の痛み・しびれの違いを示した解剖図
ヘルニアは椎間板の状態、坐骨神経痛はお尻から脚に出る痛みやしびれなどの症状を表します。

腰椎椎間板ヘルニアとは?

腰椎は5つの椎骨からなり、その間にはクッションの役割をする椎間板があります。

椎間板は、外側の線維輪と内側の髄核などで構成されています。椎間板組織の一部が本来の範囲を越えて突出・脱出した状態が、腰椎椎間板ヘルニアです。

突出・脱出した椎間板が神経根の近くにあり、機械的な圧迫や炎症などが加わると、腰だけでなく、お尻・太もも・下腿・足に痛みやしびれ、感覚の変化、筋力低下などが現れることがあります。

ただし、「MRIでヘルニアが確認されたこと」と「そのヘルニアが現在の症状に関係していること」は、同じ意味ではありません。

坐骨神経痛とは?

坐骨神経痛は病名そのものというより、一般に、お尻から脚にかけて現れる痛みやしびれなどの症状を表す言葉として使われます。

坐骨神経は、腰仙部から出た複数の神経線維が集まり、骨盤からお尻を通って太ももの後ろへ向かう大きな末梢神経です。

腰椎椎間板ヘルニアによって神経根が刺激されれば、坐骨神経領域に痛みやしびれが出ることがあります。しかし、坐骨神経痛のような症状がある人すべてに腰椎椎間板ヘルニアがあるわけではありません。

脊柱管狭窄症や腰椎すべり症など腰部の病態に伴って似た症状がみられることもあります。また、お尻・股関節周囲など別の部位の状態が症状の感じ方に関与している場合もあり、症状名だけで原因を一つに決めることはできません。

坐骨神経痛が椎間板ヘルニアだけでなく、脊柱管狭窄症、腰椎すべり症、お尻周囲の筋肉、股関節や骨盤周囲の状態でもみられることを示した解剖図
坐骨神経痛のような症状は、椎間板ヘルニア以外の状態でもみられることがあります。

MRIでヘルニアがあっても、症状がない人はいる

MRIは、椎間板や神経周辺の状態を把握するうえで非常に重要な検査です。一方で、MRIで変化が見つかったからといって、その所見が必ず痛みやしびれを起こしているとは限りません。

症状のない人を調べたMRI研究

Brinjikjiらが2015年に発表した系統的レビューでは、腰痛などの症状がない人にも椎間板の変化が認められました。

椎間板膨隆
20歳 約30% → 80歳 約84%
椎間板突出
20歳 約29% → 80歳 約43%

これは「MRIは意味がない」という話ではありません。別の系統的レビューでは、椎間板突出など一部の所見が、腰痛のある人でより多く認められることも報告されています。

したがって大切なのは、画像を無視することでも、画像だけで決めることでもなく、画像所見と症状・神経学的所見・動作などがどのように一致しているかを見ることです。

ヘルニアは自然に小さくなることもある

腰椎椎間板ヘルニアは、時間の経過とともに突出・脱出した組織が縮小・吸収されることがあります。WFNS(世界脳神経外科学会連盟)Spine Committeeのレビューでも、症候性腰椎椎間板ヘルニアの多くが自然経過で軽快し得ることや、保存的治療が第一選択となるケースが多いことが整理されています。

ただし、「自然に小さくなることがある=放置してよい」ではありません。 筋力低下や排尿・排便の異常などがある場合には、医療機関での評価が優先されます。また、治療方針は画像、症状、神経学的所見などを踏まえて医師が判断します。

整体院心華では、まず「医師から何と言われたか」を確認します

当院では、「ヘルニアと診断された」という情報だけを聞いて、すぐ整体を始めるわけではありません。

最初に確認するのは、病院でどのような説明を受け、どのような方針を示されているかです。

  • 手術を勧められているのか
  • リハビリを勧められているのか
  • 薬を使いながら経過を見るのか
  • しばらく様子を見るのか
  • 運動を勧められているのか

同じ「ヘルニア」という診断でも、医学的な状況は一人ひとり違います。

医師から手術や早期の再診について説明されている場合、その判断を無視して整体を優先することはありません。

手術以外の方針が示され、保存的に経過を見ることになっている方については、その内容を確認したうえで、腰痛や坐骨神経痛の方と同じように実際の身体の状態を見ていきます。

実際の確認例|MRIの部位だけで施術場所を決めなかったケース

40代・男性・デスクワーク
医療機関での説明
腰椎椎間板ヘルニアと診断され、「手術をするか、リハビリをするか」といった選択肢について説明を受け、不安を感じて当院へ相談されました。主治医から、現時点では保存的に経過を見る選択肢もあると説明されていることを確認したうえで、身体の状態を確認しました。
症状が気になった動作
歩行時、立位時、座った状態から立ち上がる時に症状が気になっていました。
当院で確認したこと
患側の大腿筋膜張筋周辺に触れた状態で立位を確認すると、立っている時の感じ方に変化がみられました。
さらに確認したこと
患側の腹部、腸骨筋付近に触れた状態では、歩行と座位からの立ち上がりで感じ方に変化がみられました。
ここで重要なのは、「大腿筋膜張筋や腸骨筋がヘルニアの原因だった」と判断したわけではないことです。
触れた状態で同じ動作を繰り返し、症状や動き方がどう変化するかを確認し、その日の施術場所や方法を考える手掛かりにしました。

このように、MRIでヘルニアが確認されていても、当院では画像上の部位だけを見て施術場所を決めません。

立つ・歩く・立ち上がるなど、実際に症状が出る動作をその場で再現し、身体のどこにどのような条件を加えると変化するのかを繰り返し確認することを大切にしています。

一度変化が出た場所が、必ずしも症状の「原因」だとは考えません。そこからさらに確認を重ね、その人の状態に合わせて施術内容を組み立てます。

ヘルニアがあっても症状の出方は人によって違う

同じ腰椎椎間板ヘルニアという診断でも、実際の症状は同じではありません。

  • 腰だけが痛い
  • 腰はあまり痛くないが脚がしびれる
  • 座っている時に症状が強くなる
  • 立位や歩行時に症状が気になる
  • 前にかがむと症状が変わる
  • MRIにヘルニアがあっても、ほとんど自覚症状がない

だからこそ、診断名だけではなく、「その人が今、どの動作で何を感じているのか」を確認する必要があります。

こんな変化がある場合は、整体より医療機関での確認を優先します

  • 新しく排尿・排便の異常が出た
  • お尻や股の周辺の感覚が明らかに鈍い
  • 下肢に力が入りにくくなっている
  • 症状が急速に変化している
  • 医師から手術や早期の再診について説明を受けている

排尿・排便の異常、会陰部周辺の感覚低下、進行する筋力低下などは、馬尾症候群など緊急性の高い状態でみられることがあります。

整体院心華では、整体だけで抱え込まず、医療機関での確認を優先すべき状態を分けることも大切にしています。

まとめ|ヘルニアは「診断」、坐骨神経痛は「症状」

腰椎椎間板ヘルニアと坐骨神経痛は、同じものではありません。

ヘルニアが神経根に影響して坐骨神経痛のような症状が出ることはあります。一方、MRIでヘルニアが見つかっていても症状がない人もおり、坐骨神経痛のような症状がヘルニア以外の状態に伴ってみられることもあります。

そのため、当院では「ヘルニアと言われたから腰だけを見る」という考え方はしていません。

まず医師からどのような説明を受けたのかを確認し、そのうえで実際の立位・歩行・立ち上がりなどを見て、触れた状態でもう一度同じ動きを確認する。

画像・診断名を尊重しながら、今の身体で起きていることも確認する。これが整体院心華でヘルニアの方を見るときの基本的な考え方です。

この記事を書いた人:西原 康博
整体院心華 院長。柔道整復師(国家資格)。業界歴17年、累計施術6万回以上。
整体院心華は自費の整体院です。施術に健康保険は使用できません。

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参考文献

  1. Brinjikji W, et al. Systematic literature review of imaging features of spinal degeneration in asymptomatic populations. AJNR Am J Neuroradiol. 2015;36(4):811-816. PMID: 25430861.
  2. Brinjikji W, et al. MRI Findings of Disc Degeneration are More Prevalent in Adults with Low Back Pain than in Asymptomatic Controls: A Systematic Review and Meta-Analysis. AJNR Am J Neuroradiol. 2015;36(12):2394-2399. PMID: 26359154.
  3. Pojskic M, et al. Lumbar disc herniation: Epidemiology, clinical and radiologic diagnosis WFNS spine committee recommendations. World Neurosurg X. 2024;22:100279. doi:10.1016/j.wnsx.2024.100279. PMID: 38440379.
  4. Yaman O, et al. The role of conservative treatment in lumbar disc herniations: WFNS spine committee recommendations. World Neurosurg X. 2024;22:100277. doi:10.1016/j.wnsx.2024.100277. PMID: 38389961.

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。症状や画像所見には個人差があります。診断や治療方針については、医師などの医療専門職にご相談ください。本文中の事例は、当院での確認方法を説明するために個人が特定されない形で記載しており、同様の結果を保証するものではありません。